(古本)猫のあしあと
町田康
講談社 2007年第1刷
19.3×13.5×2.1cm
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【状態】
B
表紙にスレ/中のページは美品です。
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目が合えば威嚇され、世話をすれば激怒され、平謝りの暮らしが始まった。決死の爪切り大作戦、ケージ移動のために考案したインド風ラジオ体操、「一平ちゃん」をかき込みながらの徹夜の看病。今日もまた生きていく、人間と猫の日々。(出版社HPより転載)
ニゴ、シャア、トラ、エル。
芥川賞作家町田康が、愛猫たちとの暮らしを綴るエッセイ。『猫にかまけて』に続く二作目です。
町田康という人は、たぶんとても照れ屋さんなのかと思っているのですが、小説にちらちらと見え隠れしていた愛情深さが、猫のエッセイでは全開です。
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卓袱台の上に原稿用紙を広げ、二、三枚も書いただろうか、ふと通り掛かったナナが激怒して卓袱台の上に飛びのってきて原稿用紙につかみかかり、ぐしゃぐしゃにし、床に叩き落とし、爪と牙を用いてずたずたに引き裂いたのである。
ナナに、「字を書くなんて馬鹿なことをしてすみません」と謝ったら、ナナは「こんなことは二度としてはいけないよ」と言いながら廊下の方へ去っていった。(『猫にかまけて』)
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著者の独特な文体そのままに、面白おかしく猫との日々が綴られていく...のかと思いきや、やはり別れの部分になると辛いのですが。
でも、「楽しい時間だけではなく、そのような悲しい時間、苦しい時間を一緒に過ごすことも含めて、他者と一緒に過ごすということ」とあとがきにあるように、小さな生命と対等に向き合う、著者の透徹した視点には、たびたびはっとさせられます。
著者と奥様自身の手によるスナップ写真の数々は、生活感丸出しで粗くて、でもなんだか、そこに閉じ込められている猫たちの記憶が、いっそうの愛しさをもって迫ってくるのです。