(古本)山のトムさん
石井桃子 作
深沢紅子 画
福音館書店 1991年 第16刷
19.5×13.5×1.6cm
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【状態】C
表紙カバーにスレ/カバー一部に傷/背ヤケ
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戦争がすんで間もなくのころ、開墾のため北国に移り住んできたトシちゃん一家とハナおばさん。
引っ越し早々ネズミに悩まされた一家は、子猫をもらってきて飼い始めることになりました。
あまり猫好きではなかったトシちゃんたちでしたが、トムと名付けられた子猫と暮らすうち、その行動のおかげで、毎日の生活に笑いが絶えなくなっていきます。
東北で開墾をした石井桃子の実体験を基に、猫のトムを中心にした山での暮らしが綴られます。
トムの年を忘れるように、私が、トムの幼い時のことを、ときどきに書きとめておいた話が、この本です。(あとがきより)
トムが年をとるにつれ、「もしトムが死んだら」という話をするようになってしまう中、幼いトムを懐かしむように書き留められたエピソードの数々。けれども感傷的になるのではなく、いきいきとたくましく生きる人々の生命力と、そんな暮らしに寄り添って喜びを与え続けたトムの無邪気さが印象に残ります。
猫を扱う感覚が、いまとは少し違うところもありますが、必要以上にべたべたするのでなく、生き物対生き物として付き合っているという感じなのも好ましいところです。
石井さんとトムは、苦しい時代を共に生き抜いた同志だったのかもしれません。